猪本典子『折々のごはん』
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淡いクリーム色の表紙に描かれているのは、ひげをはやした男性の顔。
A5サイズの無地のノートを、15年以上“ネタ帳”として使っている。
「表紙はレオナルド・ダ・ビンチの自画像です。『芸術界の天才』にあやかりたいと思って。フランス在住の友人に10冊単位で送ってもらい、今まで何冊使ったかわかりません」
生け花や料理などを飾り付ける人のことを、デコレーターと呼ぶ。彼女の場合は、自分でカメラのシャッターを押し、季節感あふれる写真に仕立てる。この秋公開予定の映画「空中庭園」(豊田利晃監督)ではセットの花の飾り付けを担当した。
「デコレーションは、デザインの構図をこのノートに描くことから始めます。特に写真は、光や色合いよりも、構図が大切。コンテ通りに撮影できた時が、何よりもうれしいですね」
大学で染色を学んでいたが、中退してフランスに留学、そのまま10年近く暮らした。絵画に込められた寓意(ぐうい)や隠喩(いんゆ)などを探る図像学(イコノグラフィー)を学ぶうち、「物語性を込めた写真を撮りたい」と、写真のコンテを描き始めた。
フランスのスーパーマーケットで見つけたこのノートには、写真の構図やディスプレーの絵コンテなどを無数に描いてきた。いつも持ち歩き、雑記帳、備忘録としても使っている。
最近出版した「イノモト和菓子帖(ちょう)」(リトルモア)は、全国の銘菓135種を独自のアイデアで盛り付けた写真集。掲載した写真もすべて、撮影前にこのノートにコンテを描いた。ぬらしたブドウの葉を水ようかんの下に敷いたり、お団子を「鳥獣戯画」が描かれた皿に盛ったり。
「小さいころから和菓子が大好き。みたらし団子10本食べたこともあります」。
好きだからこその遊び心があふれる、独創的な飾りつけだ。
「物の表情って、飾り方で驚くほど変わる。涼しそうにも暑そうにも見せることができます」
偶然のシャッターチャンスを狙うのではなく、綿密に計画された一瞬の表情を大切にしたい。厳かな表情の巨匠が、その創作を支えている。
猪本典子『折々のごはん』vol.2?
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